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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

写真詩詩文控え2

【109】



むしられたたそがれの光のかなしみに
灰色を消しながら
ひぐらしのように夏の雲をながめ
ぼくはかなしくないていた

無邪気な犬がだまって尾をふり
なんのくったくもない少女は腋をみせながら
額の汗をぬぐった

かすかな郷愁
と ぼくはそっと、つぶやくけれど

あざむくなかれ さわやかな緑の匂い
いつまでも、いつまでも、

夏の夕立ち



【110 人が、ひとりで】



君の知らない深い森の水面
君の知らない鳥の雲
君の知らない手のかじかみ
君の知らない性愛の歌と踊り
君の知らないこぼれおちる光の曲線
君の知らない自由のシタール
君の知らないツンと顎をあげた僕
君の知らないそよ風はイゾルデ
君の知らない落葉 不条理な問い
君の知らない亡骸 くちづけの羽化
君の知らない煙突のある小屋
君の知らない微かな羞じらいと悦び
君の知らない木々を腐らせる菌糸
君の知らない眠った子どもたち
君の知らない真昼のしなり
君の知らない観覧車
君の知らないメリーゴウラウンド
君の知らないどこまでも廣い空
君の知らない これから・・・



【111 そのスピードがたとえブレーキを】



「こわいよ、何かに追われているみたいさ」
「追われなくなったら、どうする?」
「・・・どっちにしても、お終いさ」



【112】



行き着く当てもなく彷徨うばかりで
それって好きとか嫌いとかじゃなく

それはひとときの温もり

ちっぽけな感情の届かないところで



【113】



文理シナジーということを考えながら
東京ディズニーランドがエイズです、あるいは
映像のなかにはいりきれないコンプレックスをもった
第三者の芸術家は口ごもり、ためらいながら、
ジェームス・ディーンの理由なき反抗をする
「・・・何かを分割したもののうちの、
ひとつの部分・・・」であるガリバー旅行記
には蠅取紙がある、と昔のことを思い出しながら、
―――自分だってこの世の中を作った共犯者。
「どうして、あんなにいい人が...」
と周囲がこう声を重ねたら、その反対の人を
きゅうくつに閉じ込めた社会ではない、
その人の弱さに胸がいたくなる。



【114】



幻想画家は云いました
 イカれていたのでイカした人なのだと、ぼくはおもいます
 「唯一人間らしい味がするものは、かbちゃである」
   うん、かbちゃだ・・・ たねばっかり、中身ばっかりのときもあるし、
   皮ばっかりのときもある。かbちゃ国家。かbちゃがもし、
     観念世界だったとしたら、とうぜんおこりうる誤解として
       プライヴァシー国家の安全弁(かbちゃはストローでのむ)
        ・・・という誤解をとかなくてはいけない。



【115】



それって秘密だよ
似ても似つかないもの
なんでもいいよと答えてみせる

もっと素直になれればいいね

回路のなかを電流が行き交う
( セクシーなバニーみたいに



【116 AVENUE広告機構】



君がいるだけで
世界が変わる
信じてほしい



【117】



偶然を投げて寄越した.,地面に叩きつける.,わたしの全体重.,
  爪によりて胸を引裂き.,レアリテートな口元は安堵の呼吸.,...,



【118】



貧弱きわまりない戦慄的な全領域の異様な魅力の一音
.,その半音階梯のマクシレムのためにイデアリスト
.,.,酒神讃歌の長磁に依る大胆繊細なエクスターゼ

           ―――人の顔が浮かび上がる



【119】



















【120】



タップを踏んで

すてっぷすてっぷ
はい、タアン

すかあと、すかあと

さようなら


ラナ ヨ ウサ



【121 黄金の指輪】



男というのは子供みたいなものだ
しかし男は目覚める・・・!
それは流されない、どこか縁遠い女の夢の血の滴りのように
女の身体の内部の鎖された門へと、
皺枯れたもの、あたたかいものへと這入ってゆく時、
きれいな静かな家が一人にしかないと信じる。
みな、・・・男女問わず。
欲望を持て余し、誰かを壊したい、尊厳も自由も、
魂の光でさえも汚そうとしてしまう。
けれど、たった一人だけを愛そうとすれば、何もかもを
ー何もかも夢のように忘れてしまう。
女はそれを信じる。男はそれを見ている。



【122 14歳】


       ど
       う
疑      や         世
う     っ         間
こ     て    傷    知
と     生     付    ら
さ     き    き    ず
え     て    や    で
も     い    す    無
知     く    く    垢
ら     の    て    で
ず     か    、
に     と



【123】



僕  夕
は   方
、 、
咽   空
喉   気
が   が
渇   湿
い    っ
て   て
る   る



【124 しろい嘘】



ねえおかあさん

どうして白鳥はしろいの?

―――嘘をついたからよ



【125 彼女がついた沢山の嘘】



お生憎、・・・欲しいものがあるの

世界で一番お金持ちで、二枚目で、そしてやさしい人

私は千人の男とデートをするために忙しい

メールアドレスいる? いらない、でも貰っておいてあげる



【126】



みんながバニラといったのでぼくも舌がもつ
れてうまくくちびるがうごかないのをしりな
がらベニラといいました。ベニラはきっと溶
けないだろうと思います。もっと滑舌の悪い
人が顔を真っ赤にしながらそれでもなんとか
言おうとしてベーニラベーニラとまるで花の
名のようにいうのです。みんなに笑われ、頭
をかきながらぼくは同病相哀れむ、あるいは
知ったよしみというのでしょうか、それとも
コンプレックスによる自虐を逆転させるため
の存在として受け入れたのでしょうか。ベー
ニラ、とぼくはそれ以来かのじょのことを尊
敬しました。ベーニラはレバニラ炒めのこと
をうまく発音できません。ぼくも、です。
      恋
      は
      異
      な
      も
      の
味なものベーニラがレバニラ炒めという時、
不器用なこの想い、純愛でしょうか終着ですか。



【127】



天使みたいに・・・、ほんとうにきれい
弾んでいる毬のように肉感的でいてシャープな身体の動き
剥製の鷺―――生きている時よりも、
さらに生きているような女性


* * * * * * * * * * * * 


ソ連陸軍のT-34-85の踏み潰しでござい
かたい団栗の殻を割って赤い汁を出すのでござい
上層部に具申し、反発はあったものの、
勝利を収めるというVisionの前では
ジョバンニ・セガンティーニの絵が見たい



【128 ゆるされざる手紙】



あざらしがいっぱいマグマみたいに寝てた
ぼくはそれを見て、港区あざらし界隈と命名する
村人あざらしが怪我をしたので病院に行きたいという
ぼく、獣医になろうと思います



【129】



浮かべてみますか みずうみ に
  くじやくの翅の展がり は
引力うけて加速する( 等充 圧力,拡充 幻想・・・)
惑ひを誘 ひて昇る 華
典雅の碧瑠璃 瑪瑙の美琴、されば祝詞のビバルディ
おん まゆら きらんでぃ そわか
ダーラニーの珊瑚礁うかぶ磯 おん まゆら ,
おんまゆら きらんでぃ そわか 。アルファの星より
電信あり。―――この星はあと何年もつか
ああ、aA、この子宮に流星を



【130】



なんだかほっとしたよ
タタタタタン
ひとり頷くあなたの姿
これくらいだったら良いね

そんなものさと黙るばかりで
生きていることへの証し

あれは幻影



【131】



逆再生する
  ぎゃくさいせい
   ぎゃくさ いせい
   ぎゃくさ  いせい
逆再生する
ぎゃく さいせい
ぎゃ くさいせい
ぎ ゃくさいせい
逆再生する
ぎやくさいせい
きゃぐさいせい
きゃくさいせい



【132】



1、2 の 3で僕は越えてみた
ちいさな音が大きく鼓膜のなかでひろがった
巨きな音は峠を越える時のように
ぼくの耳をすこしおかしくした
時計 逆回転をはじめる
るめじは るめじは
このいめえじは―――



【133】



つ                き あかり

灯台きれ          い

ぼ       くら キス して

さきのこ         と さきの こと

なんて考     え てもいなく て

机のう   え の落書き みた いに

ゆきかう車    の

クラクションが鳴っ         てた

こ    んな夜

ことば が 鳴らな  い

こと ば が 鳴らな い



【134】



リッチー・ブラックモア
リッチー・ブラックモア
リッチー・ブラックモア
風のない夜



【135 燃えよ! ペンギン】



効果音:ダーダン ダーダン ダーダン だんだん
ダアダン ダーアダン
ピガヂュウ ピガヂュウ!
バババ バン **炸裂音

生あるかぎり 嘆いてやれ・・・!
さあゆくぜ 俺は殺し屋

     ズダダン! 機関銃、俺に明日はない
    憎ッくきあざらしの野郎ゥ殺りにゆきます

  俺の背中は十字架・・・! 基督の生まれ変わり
 さあゆくぜ 燃えよペンギン!

      あちょー! だちょー! ふざけちゅー!
     俺にイワシをくわせてくれ



【136】



   おもいます
と    



【137 都会派の鳩】



おれ、じつは豆より
大福が好きなんだ
―――ハンバーガーも喰うんだぜ



【138】



また、貧血だ。
わたしの頭が割れるように痛い
万力で締められているというより、
その手で首を締められているようだ。
わたしは血のように
赤いワインを一滴のこらず飲み干す
咽喉元に君の名がすべりおりてゆく

・・・あなたは わたしを裏切った

やさしい月のように背を向けて、
涙をこらえて
意味のない風景が酔わせ

・・・ひとり暮らしで味わった気楽さと

ぬぐい去れない、さびしさと
誰かを愛さずにはいられぬ気弱さと

わたしだけの、―――わたししか知らない
本物の恋 ・・・辛いです、辛い です

・・・眩暈をおぼえるほど
幻 。あの時へ ・・・



【139】



男 の く せ に

女 の く せ に


脱  皮  し  た  つ  も  り  の


継  ぎ  接  ぎ



【140】



わしゃあ、寒いのン苦手じゃけん
布団かぶせてくれるかばあや



【141 うしなわれた「ゴメス」】



瓦斯タンクのことをドードーというのだ
川のことを黒人というのだ
森のことを片言の日本語というのだ
そしてわが家の扉のことを年寄りというのだ
―――電柱はクールでいけすかない
ブライアン・メイ
でなければ、エリック・クラプトン
(ピカピカ光る大型の人工太陽・・・。
わたしに埋め込まれた人工知能チップ
―――断片、―――は、
松本零士風の美人画・・・・・・。)
トラックのクラクション
怒号して走り捲くれ
・・・楽園は遠く遙かであったが
確かにがんとしてそこにあった自由の女神よ
この家にはチンパンジーが住んでいる
世話してやってくれ
よければ社長 おまえが恵んでやってくれ
しかし神よ、かつて君を盲目的に愛した彼を
どうして人の群れの中へ
なにも与えずに手放したのだ



【142】



君           気
の     ほ     だ
顔     ん     る   
を     の     く
見     少     て     途
た     し      、     切
く      だ     空     れ
な      け     気     て
か     寄      が     し
っ      り     重     ま
た     道      い     っ
       し            た
       た            会
       い            話



【143 イルミネーション・ロマンス】



ステンドグラスのように奥が透けて見えるね
聖歌合唱のこだまがきこえるね
お伽噺の展覧会場みたいだ・・・! ほら・・・、



【144】



好きな女の子の耳元に
ささやきたいんだけれど
キャンドルが、もし吹き消えて
風だけがしずかに
ぼくに吹いていたら
とかれたカーテンや
ウェディング・ドレスみたいに
ゆらゆら  君は
揺れていてくれるかなって
ええそう、
とおい海にみちた光のなかで
飛びあがった
魚のあおい風景



【145】



空ハ明ルク
コルク  ノ  栓
愉   快ナ     秩序
ソウカイ       ナ
星  空



【146 妖精の恋】



 フェアリーという言葉は「運命」を意味するラテ
ン語に由来すると言いますが真実は偽りのフーガ。
メロウな音楽にでも揺れながら死者の眼に映る過去
よ、さようなら・・。いつの日でしょう、あなたの子
供がここへと帰ってくるのは。わたしの羽根が、も
し未だ燃えるだけ燃えたことのないものだったらー。
もし・・。もし・・、真夏の夜の夢ー。もしあの時ー。
・・・たった一目で恋に落ちる魔法をかけられたなら・・。
わかりませんー。だってわたくしは・・、じめじめした
湖の妖精だから。屈託なく笑わせて・・。くださいー。
城の中の人達はわたくしにうんと優しくしてくれたけ
れど・・。水遊びやー。火遊びは教えては下さいません
でしたわ。しゅるっ、こんな風に衣服を脱がされる時
のときめきも。 あなたの・・。あまい声でー。
 「・・・魔法の香水ですよ」
 「-いや・・・」
 でもきっと素直に・・。-肯いて・・。しまうー。
 わかっていたの・・、これが最後だとー。



【147】



胸を膨らますつもりで

腹が出る

悪夢にうなされた生き物


 ぼやけた秋

 m o n o l o g

愛はまぶしくて逃げたのか(い)

しら愛はまぶしくて逃げたのか(い)

 ・・・知らない

   ・・・知らない



【148 THE HUKURO】



   ふ く ろ で す
   み ん な そ う よ び ま す
   ね ず み ?
   ま あ 、 お い か け ま す

あ さ り ?
な ん の こ と 
で す か

         お ふ く ろ ? 
         み そ し る
        た べ て く だ さ い

       こ ぶ く ろ ?
       め い よ き そ ん で
       う っ た え ま す よ



【149】



あなたと踊りたい
胸底深く燃える夕顔の花
  .,.,運命でしょうか
  あの列車でただ居合わせ、
浮き世の戯れし事
共に誘われ、来てみれば
  .,.,あな た・・。
知らないでしょう、あなたの
まわりの空気は明るく、
  .,.,一目で恋に・・。
   華やかで、無垢で、笑顔が素敵で
指をからませたらー。放したくない
ざわめく心臓・・。ゆれる瞳・・。
  .,.,できるなら口付けを
 許されるなら一晩中・・。



【150】



そんな部屋がない

そんな鍵がない

そんな意味

そんな無意味

そんな価値

そんな無価値

扉の向こうは教会である

閉めて開ければ、再た教会

そんな境界線

そんな国境

そんな海



【151 嫌な記憶】



ふと、わたしの部屋がどうしてこんなに暗いのか
と思うそれは廃墟の病院の通路を迷走している十
二歳のアリス・・・わたしは段々と窓がひびわれてく
るように思える花瓶がこの世ならぬもののように
思えてゾッとする視界はひとつの扉なのかもしれ
ない選択した瞬間するりと絵画のワンシーンが滑
りこみわたしは一生それをどこか人の目にあたら
ない所に蔵い続けるのだ



【152】



ねえクリストファー、怒らないでくれよ、
・・・復讐をして、いったい誰が得をするの
って君は言ったけど、君を騙して、君が
何も言えないまま、つめたい身体にな
ったのを見た時、ぼくはね、・・・腹を決め
たんだよ。ぼくは輪廻の地獄におちても
構わない。魂が血で汚れても構わない。だ
から、神はいないとぼくは決めたんだよ。
たとえ、お金がね、クリストファー、君に
とって紙幣やコイン、それこそ神様の落
書き、札束いわく毒薬、狐と狸の化かし合い
とせせら笑った君のように価値がないとし
ても、ぼくはきみの名誉を守りたかった。
いや、責任はすべて僕にある。クリストファー、
クリストファー・・・、こんなことをして、一体
誰が幸せになるの、と言った君の声が胸を
すりぬける

 ― ― ― ― ― ― ― ― ―
  ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 奈落がある。ぼくはそこで地獄
の亡者の仲間入り。人でなしの仲間入り。
嵌めたものは嵌められる連鎖の仲間入り。



【153】



奥行きは好みの服を着ている
光は二つに分断し、シャンデリアの影の思考と、
彗星を寓意したような女神とが・・・、
いつまでも変わらない蜜に焦がれ模造の宝石をつくる。
点灯され消灯する―――沈没し、浮上する・・。
指ではずっと掴めずにいた魚の骨が
歯に引っ掛かっていたように、この奇妙な戲れが、
いまも地球はすべて陸地である。否、地球はいまも、
水のヴェールに隠されている、という真実を、
あたかも霧の晴れた夜・・・。-月の威容から
色褪せつつ、なお一層うつくしく知る。
きこえませんか、きこえませんか、
ガムランボール・・。



【154】



かいようしんそうすい

のみたかった

ばいきんまん



【155】



 私にとって不快なことに 右足は左足を見ようとしない
 十メートルはなれたところから  この点について、もっとくわしく知りたいと
思うのだが  一日は三十日あって、カテゴリーは十二に分かれ、だれもが気軽に
船旅をつづけている。すなわち「問いかけの輪郭を明確にしなさい」
 読み手のこころを混乱させる 言葉 1 ほんとうに神が言われたのですか?
 言葉は嘘でしょう? 無意識と顕在、 その箇所をとばした  あれ  ない

       言葉     いように  言葉  それで  も  それでも言     葉

 ―――どこで始まり、どこで終わる。終わらないし  終わらない。感覚に働き
かけるもの  意識に働きかけるもの  耳に触れるもの。外からくるものが問いか
けで、内からくるのも問いかけで  れれれれれ  れすぽ。これが拒絶ではなく領
域なら、心臓へとつづく原理なら魂は呼吸する。生命は血の意見をきく。浄化さ
れたい。霊化したい。そせい  した  い

       月曜y美は形成される  火  you日は絞殺される



【156】



フラミンゴ フラミンゴ チリペッパーフラミンゴ
フラミンゴ フラミンゴ レッサパーンダフラミンゴ

フラミンゴ フラミンゴ トウガラシーヤフラミンゴ
フラミンゴ フラミンゴ カニミソクイタヤフラミンゴ

フラミンゴ フラミンゴ アカハナトナカイ
            タワシデヤラレタフラミンゴ

 フ
  ラミンゴ! フラミゴ! フラゴ

           フラノデフラオ フラフラヨ

     ブラブラブラオ ウラシマタロオ

フラミンゴ フラミンゴ チリチリヤガナチリヤガナ
フラミンゴ フラミンゴ ドナイモコナイモフラミンゴ


フッフ フフフ フラミゴフラオ フッフフ グフフ
  ハラグロオ ハラグロ/フラ ミンゴ 


       シラミノフラオ ダニ ツキ フラオ
    フラフラ フラオ フ ラ ミン ゴ 


 フクキタフラオ / コンニチ フラオ
クビガナガケリャ キリンダト

  ハナガナガケリャ ゾウナノ フラオ



【157】



 わたしの首がありません わたしの首はてのひ
らよりすこし大きいくらいでした わたしの首は
二つや三つあったわけではないと思います わた
しの首の部品の一つである口で会話が交わされて
いたと思います 言葉を重ねれば重ねるほどわた
しは曖昧になります

 わたしは戸惑っていた わたしはその声が脳内
にひびくテレパシーであるということを認識して
いたからだ わたしはそれと同時にその声は一体
どこから響いてくるのかという疑問をもちました
 わたしはその声がしかるに魂のなかの共振現象
であると解釈する わたしとわたしをつなぐため
に次元のちがう配管があるはずなのだ

 わたしはつねになぜ構成されているのかに戸惑
っていた わたしは催眠術にかかったように時間
と場所と現象についての存在をしるしたレポート
をほしがっていた わたしには首がないという者
がいる わたしには首がないという者と脳内で話
す者がいる そしてわたしという客観的な存在が
それを卵の殻が散らかっているとまとめようとす
る すなわちわたしは景色である



【158】



あなたの息であたためて
同じ服を着て
同じ顔つきをしている
狭い柵のなかで



【159 ~どれみふぁ 
       空の一部~】



なんというか すごいね
そらって ひろいね
ぼくは かなしみというのがわからないな
よく かなしそうって
いわれるけど なんだか
ただ すごいね



【160 生きてるって素晴らしい】



あら綿菓子かと思ったら
あんた、わたしの卵じゃない
・・・何ツ、見てンのよ、
カツカツ!クエーッ
割ったろか!



【161】



             は
             じ
    震        め
    え        て
    な
触   が    あ
れ   ら    の
ま        人
し        の
た        心 
         に



【162】



これは隙間である 少なくともそれにきわめて近い
これは隙間である わたしの身体は入らない
これは隙間である イメージは向こう側、向こう側

これは部屋である 定義するものは常にイメージ
これは部屋である 人間の吐く息が混じる
これは部屋である 入ることのできない部屋である

これは身体である 控え目にいって構成物質がある
これは身体である ただそれを回収する場所がない
これは身体である しかし活動の停止は珍しくない

   わたしは消失して復元される瞬間
   わたしは同化して拡張される瞬間

   落葉も吸殻も団子虫も小石も土も
   わたしは必ずわたしとして振り返る

わたしは延長されてゆく わたしは増加されてゆく
わたしは時計をみている わたしは分割されてゆく
   
   すなわち何者かであるということは
   忘我の状態から覚め 空白期間から

   の復帰が必要ということである そ
   してその必要は対象とする解法であ

   り たとえそれが希薄で 放心し眠
   りと何ら変わりがなかろうとも



【163 急須 JAPANESE TERPOT】



急須はえらいとおもう
   えーと
なんでえらいかっていうと
急須だからです
しろい急須はとくに急須っぽくて
えーとえと、
柄のあたりから業突く張りの気品、
差動(×作動)
もう、うせえ
なんとなく急須らしさが
ただよっていて
おまえキュウカンチョウノ官庁だ
なるほど急須
キュスキュス・・、クスクス
ほら笑った!
ごつん
ってえなあセンセエ、
じゃあ急須ってセンセエ、
じゃあ急須って漢字、
先生書けます?
ほら書けたでしょ
ぼく、書けない
急須はえらいのです
クス
ほらセンセエ
も笑った



【164】



○ 短詩批評結社より配信 ○

「なタデココ 時間の種となり負い目をつけたい」を読んで


a やわらかい機会、サド侯爵と少年と犬になりたい
b 機関銃のように随所に飛び出してくる、迂遠なムードを遠ざけようとする
翻訳不能の、抽象世界に躍る語句。下敷きも発禁を喰らう画面。パブリック
イメージという言葉さえも遠い。たとえるなら、パントマイム・ブロック・
イメージ。唯一言、死ね、と讃辞を贈りたい。賞金かえせ
c なんだか不安です×たぶん不安です×不安ですか?×吐き気しますか?不
安という字をいくつも書き連ねていくこと自体が不安です。しらばっくれるか
しら。しばかれるかしら??? ・・・あふン
d ・・・この作品はたぶんソフトマシーンのジャンキーでしょ。芸がないね。エ
ロ本大博覧会に持っていきたい。濡れたタイヤにふんづけられて悶える彼自
身の声だろう、もっと余韻の裏切りがよみたいね。スポンジを埋葬するとか
さー。おれっち。おれ血。たらあ(但しこの比喩は了解できない、と返信さ
る。賠償金はらえ、殺すぞと脅迫されたので結社を緊急退会する)



【165】



 ちりん 陽をうけてきらめく水。ホースで撒かれ
た溜まり。記憶にある場所。誰かの心の一部だった
かも知れない。Tシャツが旗のように揺れ、手を振
る彼の陽射しのなかで溶け・・・・・・・・

入道雲。川のぱちゃぱちゃ跳ね
たりしている音。不純なほど魂の
内奥にひびく完全に透明な光。

カットアップ 竹林。フィードインが、、丘陵
取りも直さず続く。ハイヒール・サンダル。。。

イメージはハレーションをおこす。
滾々と湧き出ている。コップの中を
満たそうと焦り、暑い、短い、しか
も熱をもって茹だった身体にはエキ
ゾチックで劇的にアナーキーな過去
の記憶を並べ換えたり、組み替えた
りしながら次へ、そのまた次へ

 足が踏む翼に。足が踏む鳥に、地面に急速に接近し、
気持ちをだらけさせ、さらに筋肉も加わって、舌は引
き抜かれ、ああ新陳代謝を阻害し、もっとも相応しい
庭の美しい草花、昆虫、めいめいにとっての休息しか
し結局は自分には無縁のすぐれた研究 夏だ! 夏だ



【166 え? え? え?】



ふわあああ
人間おるじゃねえべか
こんつは
いやいや、こんなこというべから
田舎モノっておもわれてしまうべ
ヘイ、そこのカノジョ
おいらと紅葉たべにいかね
下心なんてないべよ
金太郎ごっこしたいだけよ
すてきなクマさんねと
いわれたいなんて
そったらこと言わねえべよ
ーあら、素直ね



【167】



テスト氏は無類の時間的な考
断片は人間の浅墓さと
こゝろという空虚さを

 ―――感情がえぴそおど

  ドのないおたまじゃくしでも
  叫びになる!強い光になる..

テスト氏は無類の時間的な考
なにを見つめていたか?見つめていたか

     ―――それも束の間

むだにややこしい一切は
見る間に消えるもの

  ..........

  ........何故



【168】



陽の射せば、なんていう確信
それからは語らずに淡き光のまえで輪郭はぼやけ、
いまやもう断片となり、
たまゆらの惑ひ・・・、
うつむいて、色づいて、
樹も人も夕暮れを見つけ
きいろいサーチライトが遺体を発見するまで
さして時間はかからぬだろう。-

年月を超えしところに魂の残滓あり
すでに古りし嘆き。-
くろい泥とつめたひ雨と共にあり

そこへ さっと風が吹いてくる
もう少し待てよ。-存命しろよ。-
まだ固まるな、海や空へ、草や木へ
・・・魂の奪われることのない黄金いろの空へ。



【169 ウサギを食べないで】



注意!!!
あなたの後ろ
虎がいる

ワタシのお尻があんまりにもキュート!べりー・キュート
マリリンも真っ青、ノリカはがっつり・・って
チガアアアアアアアウ!
タイガーがワタシのぷりりんとしたお尻を狙ってる。
やつ! ・・・かぶるつもりだ。かぷりとやって、
ワタシを骨にするつもりだ。コケにするつもりだ。
それできっと、・・・ええ、-きっと、しゃぶるつもりだ!



【170】



おくびょうなロープウェー
ゆる やかな通路は、くっきりと
澄んだ土曜日の午後の、ある窓から
高所恐怖症、落日が倒れ、  グ ルグル
もやも  や、見逃してください  沈黙⇔饒舌
天井に話しかける、三つ指つきながら、
慇懃な態度。一時間、二時、三。。
自然な安眠をさそう、ゴットン
ゴットン、ゴットン規則的
にスクリュー、ヘリ、
おくびょうな家
の道案内。


【171】



俺はこの蹈板を
蹈板を
次も、またその次も
ハアハア
イキ切らしながら、アエぎながら
ハエになりながら、
老けこむ、
胸が熱くなるのを覚えながら
沙漠みたいに裁かれた[この渇き]
ショートカットしたい高速道路みてえに
うつむきながら
ステージはかがやきだす
マジック・ワードの
夜をのぼって
もう俯向いちまったのか ナア!
(答える者なんて一人もいやしねえ)
市ねえ、死ねエ
ハアハア
アける キける ここンところの期待
こうナっちまったら 首都移転
大阪にスルかってなイキオイ
なんだってイエる イエるさ
はしってサンケツだから
俺の夢はグレートな
ハイドロプレーニング現象
死ぬほどMIRACLEな脳内モルヒネ



【172】



ドアは閉まっている、ドアの鍵は閉まっている、
そしてそのドアに僕はへばりついている。
もう、ドアを開けることは二度と無い。
ドアを開けることなど二度と出来そうにない。
開いているドアで、閉まっているドアで
ドア? ・・・ぼくは不安定な心、
ママ? パパ?
ぼくはドアを叩いている、開けてくれ、という
ドア、は感情を殺している
声的ポーカーフェイス。感情の起伏が感じられない
そしてまた感情そのものを見せない
感情を押し殺して相手に衝撃を与えない術
えにゅっ、とドアの隙間から蛇がでてくる、蔓が這う
ドアは段々とイライラしてくる。濡れてくる
ごおっ、酸素ボンベ
ドアには必要だ、

耳から音が消えてゆく
それは音が抜けていく、透過していくドア、
ドアは蜥蜴の尻尾切り
喉に炎症、鼻づまり、マスク!マスク!を・・。
ドアは出来映え、鏡の自画自賛
かんかん、ハンマーで叩いている上ッ面
ドアは刑事や探偵やお節介な民間人をもとめている
フランダースの犬にもわかる、悲しみ
パブロフの犬なら伏せをしてベルを待つ
ドアはドンキーホーテ!
ドンキーホーテ、永遠のラムネの泡
過去が軍艦マーチならともかく
ドアは、電気屋のマッサージチェアーで、
何時間も居座るオバサン

ーードアに爆破装置、硬質のベッドがほしい
フィーリングという適当さいい加減さ
ドアはトラックや、ショベルカーや、ミキサー車が
こなごなに砕いてしまう! ドアはエロジジイ
永久に虫歯がない、入れ歯ばか望む
ドアの向こうに階段がある、廊下/老化
ドアは能がないロボットみたいなもんさ。
クマみたいなもんさ、ドア!ドア!
火葬や、埋葬―――不意にあの日のくちづけ
ドアはジャンキー、眼の下に隈ができている、かぶいている
───その通りだ。俺はいつのまにか麻痺している、
麻薬でもやっているような気分になってくる
注射器で打たれたのかわからない、いつ俺に受信機がつけられ
ラジコンみたいに操られたのかわからない

ドアの時間は砂が落ちるようにサラサラとこぼれていった、
ドアはスピード、こぼれた砂ばかりを見る
・・・消えていくドアの内側か、外側か、
それとも悟る試みか、生きる時間か、
でもドアは生きている、死んでいない、・・・ECSTASY
ドアは時間をわからせないようにする、
一年間というものを、そして一日というものを、
時間という概念を。ドアは頭の中に刷り込まれた
ドアは一瞬の輝きの連続、まばたくリズム、
ドミノタオシのリズム。ドアは待ち合わせをしている、
たまに私を! わたしを待っているー。
ドアは言い切りたいと思ってる、自然に起こり得ないこと、と・・。
ドアは触れたい、大小入り混じった時計という競馬場に、
万馬券をつっこんだ、人間たちの劇を

ドアは、ときどき泣いていることがある、男の後ろ姿みたいに
眠りつくまでの短い間、あなたを愛しく思っている
感情そのものもなく、血の通っていない人形のように
その綺麗な顔に皺がうかぶ、そしておまえに傷一つでもつけてしまったら、
申し訳が立たないな、とおもっている。
ドアはやっぱり哀しむだろう! ・・・ドアは重荷が好きだ、
足手まといが好きだ。むくわれないこと、見返りを求めないこと、
ドア!ドア! ・・・あなたの人生の中にこんな盾がある、鎧がある、
雰囲気は可憐そのもの―――脳裏にいくら
冷たい声が浮かび上がろうと、遮るドアの向こうに
あなたの、ほんとうに大切な人がいる
ドアはモンタージュ―――ジグソーパズル!

ドアよ、月の光を聞かせてくれないか
くしゃくしゃの紙みたいな声で
ドアは肯く、・・・おおきく おおきく、くしゃみする
ドアよ、独り言というのは奇妙なものだ、
見られている場合においては、おおくは見ている場合だが
大変気味悪くて、それが聞こえなければ、まだいいのに、とおもう
そうドア・・・! 不完全な記憶のなかに、
吸収されていったらよいのに、養分となり、あたらしい花を咲かせれば、
それでいいのに、ドア!ドア!
もう返すよ、と言わないでほしい、でも返すと言っているんだ、
唸る他にいい相槌がないと知っていたって、記憶というシステムを起動する、
構築する―――しかし遠くの方で、それらが連動している

ドアは恐ろしいというより、面白くておかしい話をいくつも知っている、
おねだりしてごらん、
感触が蝕むほど、巡り合わせてきた立会人に、
ほとんど唯一といってもいい立証人に
・・・ドアが首をかしげたとしても、みなドアのことには気づかない
ドア!ドア! こっ恥ずかしくなる、意欲そのものの肯定論者になる、
言葉はまるで、ドア そこから始まる
ドアは右手人差し指の爪を噛んでいる

子供の時に、美しいと信じていたものが天使と悪魔のように思えてくる
ドアって、どんな存在になるんだろう?
ベランダで喧嘩をしていた鳥なら、ドアと話すこともあったかも知れない
ドアって、赤い夕陽に何を思っていたんだろう
ドアって布団で眠らない、煙草を吸わない、枕で寝ない、
ドアってなにも食べない、息もしてないように見える
ドア、ぼくは誰だろう? ぼくは誰なんだろう・・。
ー雷や雨音 (( 恐 怖))
勇気は好奇心になり、抗いようのないギャップは抱き締めた時の感覚
世界は柩か? いや違う、生きる力だ

ドアは閉まっている、ドアの鍵は閉まっている、
急がば回れ
そしてぼくは対角線上の点を見知った
南の反対側が北であることを考えている
、でもドアはここにある・・。
視線を送ってみる。それでも重々しくなる。気分が湿っぽくなる。
トロトロとなる。怒りの感情が身体中を循環し、
それは空気感染したように蔓延している。
、でも、水色のヴェール、暗闇のテールランプ
朝がやってくる、・・・くるはずだ、ドア

遠い日のドアにクレジットカードの盗難届があったりする
ファッショナブル! エレベーター的露骨なセンセーショナル
・・・何が言いたいのかわからないドアは記録する文学だ
復讐する、情熱の斷片だ、―――不安におそわれて、一階のフロアの
ボタンを押す。でも、何処かだなんて、問題じゃない、
ぼくらは夢中でドラマのエンディング・テーマをさがす
あたらしいドアが閉まるたびに、・・・指紋をつけて、(また、つけないで
―――ドア!ドア! キキーッ



【173 習性】



ーなあおまえ、これ美味いか?
ーたまに、・・・びみょう、って思う。
ーでも食うよな。
ーよな・・。



【174】



目が回りそうな恐怖、渦の中にいる不安
キョロキョロとしている挙動不審な君、
・・・陳列棚、

         棚の中に、商品が
      プレートに、名前が

耳を澄ましてどんな音でも聞き逃さないような君、
破壊したくなる

         バクダンをもって、歩いても
      どんな嘘を、信じていたとしても

何度も確かめたくなる。
君を奪うのに、君の理由を、いまも、君の心を
それでもまだ君の心は離れてはいかないみたいだ


もう少し歩いてみよう、スーパーマーケットのような心を。
歩いてみよう、体温のない、夜の強盗

堂々と闊歩している。力強い歩き方で、

嚠喨たるファンファーレ/嚠喨たるファンファーレ
遠い日の風船を手放した子供が

ぼくが気球をながめている、遠くまでとべ、
見えなくなるまで
・・・陳列棚、

         棚の中に、君の子供が
      プレートに、新しい人生が

ぼくはいつの間にかタフじゃない、
マシじゃない、

でも君を探している
―――君を探している



【175】



「悪かったよ・・・」
と僕は心に決めてそう言った。
「何がですか~ぁ?」
目を丸くしたフリをする。たぬきがパンダになったような気がする。
「―――起きていたんだろ、悪かったよ・・・、」

陳謝 チンシャ とかくな、とぼくは思った

「・・・何がですか~ぁ?」
頬笑みながらとぼけている。とぼけていることは、とぼけている。
とけいがとぼけたら、とけている。

ひざしのなかのゆきはきれいだ。

「だから起きていたんだろう? ・・・だから悪かったよ」
ーーでも偶然だし、不可抗力なんだよ。
おまえが服を着ていたなんて知らなかったんだ、
ヌーディストビーチじゃないんだ、更衣室じゃないんだ、
わかるだろ、わかるだろ?
「・・・ねぇ、別に勘違いしないで、とは言いませんけどね」

でも/という注釈はつけるわけだ

「・・・言いませんけどね・・・・・・別に、裸見られてうろたえたりしません」
「そ、そうか・・・。」
純情なのだ、ぼく。
「ヒステリーでキーッしちゃうオバサンではないんです。」
「そうですか、おまえさん」
「そうですよ、おまえさん」
でも、ぼくを陥れるようなマネをするな、とは言いたくなる。

そして彼女は急にくねくねしはじめる。
・・・ステンドグラスに、おおマリーア!といったら、
ぴきっと、窓ガラスわれたらいいのになあ、とぼくは思った。

「どうした? うなぎくいたいのか」

うなぎ? なまずです。なまずといえば、どじょうだな。
ッテチガアーウ 。アウ ぼくはオットセイ

「ナイスボディは?」
「うん、そうだな・・・・・・」
と僕は同意する。
「猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏」

そして/オットセイたべたいきみは
ふゆのくにのおうじょ

にせのくにでは、よくじょーによくじょーする
ゆうじょによくゆうじょーという/よくじょー

せかいはよくやってるじょー



【176 不完全なわたしは】



運動が変転する。-風のように、その風景が併走して、
ある瞬間。-ふっと、・・・力をもったように、意識の核をえたように、

視活動。・・・存在する所以のように、魂がゆらぎ。-
いま、どうして。-あの人を憶う。・・・どうして、

線もなく画もないのに。-世界は数珠つなぎ。・・・否。ー否、
世界は湿って。-ねばねばして、・・・どこまでも、だらけて。-ふやけて

映写機のなかに。-まぼろしの町があって。・・・それを知るがゆえに。-
僕は不幸なのだと、-まるで、・・・まるで、

ーかかる陶酔の卑猥な絵のように、-焦らすように。・・・洩れてくる、
分離と。-めまぐるしい結合に、・・・いま、拍子をとって。-



【177 遠い日の僕には】



薄皮がめくれるような駅前ロータリー
視神経の芯を折るようなフロアにひびく軽いざわめき
窓際には観葉植物、天上にはプロペラがくるくるとまわり
・・・螺旋。
どうしてウーロン茶を飲んでいるのかわからない、
どうして傷付いているのに、ポーカーフェイスをしているのかわからない、
蒼白い反応。-冬の日没間際の割れそうな窓に、
自分のつめたい顔がうつる。
煙草をくわえて、-火を点けて。-吸って、
・・・不意に大人びた顔が、美術室で見た仮面のような気がして、
ーあれはデスマスクなのかも知れないと思って、なぜ。-なぜ、
僕は念入りに吸殻を揉み消そうとしているのか。
めくらや唖のように、-なぜ、いま。・・・さらに静かに、
この不整なる情念の貌を“動かされている”と思うのか。



【178 影響】



まっすぐな道を欲しがっている ぼくに

光が曲がるという身近な真理を。


人が光であるという時に 闇は

その肉であるという純粋な直観を。



【179】



空虚な液が眉の色に染まる   


by  シンプル



【180】



咽喉














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